とりあえずこれが大体の形です。
相談したとおり格納庫関係のテキストを追加予定。
●テストパイロット
悪童同盟のパイロット訓練は本当に過酷だった。
だが過酷なのはどこも一緒かそれ以上というのが隊員の認識でもあった。
国自体、建国の前から一貫して楽だった事などほとんどない。慣れてしまったという部分も確かにある。
しかし何よりそれ以上に彼らが過酷さに耐えられた理由は、悪童屋の見てきた戦争の方がよほど無惨で残酷だということをよく理解していたからだ。
だから悪童同盟が共和国の例に漏れず共に和すことを掲げ、航空戦力の拡大路線をかなりムリなペースで推し進めても誰一人として文句は言わなかった。
そんなわけで、機体もロクに配備されていないうちから悪童屋が『次は宇宙だ!』と言い出しても当然ながら誰一人として文句は言わなかった。少なくとも歴史ではそうなっている。
移り変わる戦況のおかげで航空機が台頭しつつある中、航空機操縦のメソッドを持つ国はそう多くない。宇宙戦となるとなおの事だ。
その開発を一からやる。
普通は足踏みするところを、『なら俺らがやってもスタートは一緒だな』と笑った辺りが悪童屋の面目躍如。予算や設備は気合と努力でカバーするいつものデスマーチが始まった。
ちなみに選抜されたメンバーは予想される地獄に震え、冗談抜きで遺書をしたため仲間と別れを惜しんだという。この辺りは歴史ではカットされている。
いつか国産の機体を空に飛ばし、そして戦争に勝つ。そんな夢と目標を同時に掲げられた部隊は、元々少ないパイロットと整備兵の勉強会という形からスタートした。
自国産の機体を持たないため、当初はまず他国の機体が教材として指定された。
パイロットは機体を知り、整備兵はパイロットの感覚を学ぶ。
戦場に送り出すべき機体の把握とフィードバックの相互関係を円滑に進めるこの地道な作業は功を奏し、促成栽培をスパルタでカバーした彼らは見事結果をだしてのけた。
元から人材不足で多くが部署を飛びこえて仕事をしていた事や、他国でI=D従軍経験のある国民がいた事も確かに成功の一因ではある。
しかし何より彼らの原動力となったのは、藩王と同じ夢を見ているという思いだ。
小国ににあわない大言壮語は敵を作りやすい。だが、賛同する者の心はそれ以上に熱い。
悪童同盟のテストパイロット達は、いつか国産機が空をゆく事を夢見て今日も研究に余念がない。