●アイドレス工場
悪童屋は、当初から悪童同盟を工業化する事を考えていた。
そのため燃料採掘施設やインフラ関係を重点的に整備していたし、将来的に工業地帯になる広大な土地を用意してもいた。
海やオアシスを結んだ中間点に広がる工業地帯。そんな場所に完成したの施設の一つが、悪童同盟のアイドレス工場だ。
悪童屋の夢は国産機を飛ばす事だ。
帝国・共和国ともに急ピッチで進む戦力拡充や、決して潤沢ではない国力などを理由に中々進まない計画ではあるが、相変わらず夢は捨ててはいない。
そんな夢の詰まった工場は、安全性などの問題から都市部から離れた部分に位置している。
最大限気を払った居住区は存在するが、やはり住みやすさとはほど遠い場所だ。
だが、藩王と同じ夢を見たがる国民達はこぞってそんな場所に働きに出た。
そうして人が集まれば活気は溢れ猫は闊歩する。悪童同盟はそういう国だ。
決して楽ではない家族と離れた工場勤めも、夢を抱いて猫がいるなら頑張れる。
なんだかんだ言って悪童同盟にはバカが多くいたのだった。
ひたすらラインに向き合う仕事だって、過酷な風土を楽しく生きてきた彼らは余裕で臨んでしまう。
厳しい労働環境だって工夫と気合でクリアしてしまう。
『やってやれない事はない、やるしかないならやるだけだ』
そういう気風があったからこそ、悪童同盟の工業地帯は多数の腕利き整備士を生み出す事になる。
悪童同盟の強さの理由は、人の強さに他ならない。
今はまだ存在しない国産機。そんな夢を堂々と見ながら、今日もアイドレス工場は元気に稼働している。